取材/ストーリー
2025/05/02
心臓病とガンを経験しながら今年で16歳!毎月の通院によりささいな変化を見逃さなかった

コタロウは7歳で心臓病を患い、14歳のときには左後ろ足にガンが見つかった。
大きな病気を経験しながらも、今年で16歳になるコタロウは今でも食欲旺盛、散歩も毎日行っている。
そんな幸せな日々を支えていたのは、5歳から続けている「毎月の通院」だった。
トリミングサロンではなく病院併設のサロンに通うようになったコタロウは、トリミングのたびに触診や食事指導を受けていた。その習慣があったから、病気のサインを見逃さなかったのだ。
今回は、家族と獣医師に見守られてきたコタロウくんの15年の歩みを伺いました。
コタロウくんのプロフィール
●年齢/性別:15歳の男の子
●体重:4.3kg
●既往歴
・7歳、僧帽弁閉鎖不全症、胆泥症を発症
・14歳、左後ろ足と膀胱に悪性腫瘍が発生
目次
15歳になっても”主役願望”は健在!

コタロウに出会ったのは15年前。
出会った当時のコタロウを「小さくてぬいぐるみのようだった」と話すオーナーの木下さん。
両親と相談して、犬を迎えることになった木下家。その後ペットショップを何店舗か回り、コタロウに出会った。
当時はミックス犬が珍しく、ショップ店員からは「どんな性格になるかわからない」と言われたというが、コタロウの可愛さに一目惚れし、そのまま家族に迎えることになった。
迎えてからのコタロウの性格を、木下さんは次のように笑いながら話す。
「昔からずっとわがままで我が強くて。自分が主役じゃないと気が済まないんです。
先日、甥っ子が遊びに来た時も、主役の座を奪われそうになって大騒ぎ。『オレに構え!』って吠えまくるんです(笑)」

一人称を「オレ」と称される一方で、ちょっとビビりな一面もあるという。
「散歩中にほかの犬に会うと無言で逃げちゃうんです…。抱っこされてる時は吠えるのに(笑)」
さらに、「抱っこされるのが大好き」という甘えん坊な面もある。
あまりにもせがまれた場合は、抱っこ紐を使ってコタロウを抱きながら家事や仕事を行うこともあるのだとか。
「実は、父親は犬を迎えることに反対だったんですが、今ではいちばん溺愛していますね」

トリミングを兼ねた通院
コタロウが5歳の頃、トリミングを終えて自宅に戻ってから様子がおかしいことに気がついた。
「目を開けにくそうにしていて、すぐ病院に連れて行きました」
原因はサロンでのシャンプーの洗い残しだった。
すぐに動物病院で洗浄してもらったため大きな問題にならなかったものの、それ以降トリミングは病院にお願いすることにした。
またトリミングのときには、併せて触診をしてもらったり、気になる症状や食事内容についても相談したりしてきた。
この「トリミングを兼ねた通院」が、今でもコタロウが元気に過ごせている一つの理由だ。
7歳のとき心臓病が見つかる

トリミングを機に毎月病院で診てもらっていたコタロウだが、シニア期に入ったこともあり、先生の勧めもあって定期検診を受けることにした。
7歳のときに実施した定期検診で、心臓の中で血液が逆流してしまう「僧帽弁閉鎖不全症」と、胆汁が泥状の胆泥として内部に留まってしまう「胆泥症」が見つかる。
幸いなことに、どちらも病気の初期段階で見つけられたという。
その後は、食事療法と薬物療法が始まった。また毎月のトリミングの際には、コタロウの健康チェックと体調に合わせた食事指導も行なわれた。
「先生に言われて、ごはんはロイヤルカナンの消化器サポート(ウェットタイプ)に変えて。
大好きなササミも、病気と相性が悪いのでやめました」
療法食に変わっても、コタロウは毎食おいしそうに食べている。
薬も吐き出さずにしっかり飲んでいる。
しかし木下さんは、コタロウが大好物のササミを食べられなくなったことを気にしていた。
代わりにあげて良いおやつや量を先生に相談して、ご褒美にりんごやスイカなど季節の果物をあげるようになったという。

突然できた「おでき」。その正体はガンだった
治療の甲斐もあり、元気に過ごしていたコタロウが14歳になったある日のこと。
「知人の家で飼っていた犬が去年亡くなりました。
『おできだと思って様子見していたものが実は悪性腫瘍で、検査した時には全身に転移してしまっていた…』と聞きました」
その話を聞いた頃、コタロウの左後ろ足にも「おでき」があった。
「もしもこれがガンだったら…と思って、検査をお願いしました」
検査の結果、後ろ足の付け根と膀胱に悪性腫瘍があるとわかった。
先生からは、「後ろ足の腫瘍は手術で摘出可能だが、膀胱の腫瘍は手術ができず薬物療法で抑えるしかない」と言われた。
当時のコタロウはすでに14歳。
年齢や体力を考えると全身麻酔や手術の負担が大きいかもしれない…薬物療法も副作用が強いものや費用が高いものなどさまざまあり、木下家は悩んだという。
「コタロウの生命力を信じて、足の付け根にある腫瘍は手術して摘出することにしました。
膀胱の腫瘍は、『犬らしい生活ができること』を最優先したいと思って、副作用が強い抗がん剤治療ではなく、消炎鎮痛剤を使って痛みとうまく付き合う方法を選択しました」

手術は無事に成功。
幸いなことに膀胱の腫瘍も経過はよく、最近の検査でも腫瘍の転移や増大は認められなかったそう。
「コタロウは本当に生命力が強いんです。先生からも『病気はしているけど15歳にしては元気だ』とよく褒められるんです。」
1日でも長く、一緒に楽しく過ごせたら

そんなコタロウも今年で16歳になる立派なシニア犬だ。
今でも食欲旺盛で、朝晩120gずつ欠かさず食べる。
筋肉の衰えも感じさせず、散歩時間も幼い頃から変わらない。
とはいっても、服薬中の薬の副作用と加齢により、最近は毛量が減ってきたという。
また耳も遠くなっていて、呼びかけても反応がないことが増えた。
さらに、この1〜2年で寒がりになったコタロウは、日向ぼっこが好きになった。
朝起きたら日向ぼっこをして、体が温まったら散歩に出かける。帰ってきたらごはんを食べてもう一度寝る。
これが今のコタロウのルーティンだ。

今回の取材を通じて、木下さんはコタロウの好きなところをたくさん教えてくれた。
「わがままで、我が強い」「小心者」「抱っこ好き」「ハゲてきたけどかわいい」「怒ったときはひどい顔」など、「結局どんなコタロウも愛おしい」のだろう。
最後に、そんな大好きなコタロウとの今後について聞いてみた。
「コタロウのおかげで毎日が幸せです。ここまで頑張ってくれてることが何より嬉しい。
1日でも長く、一緒に楽しく過ごせたら…それがいちばんの願いです」