健康と病気の話

2025/09/09

老犬のうんちが黒いのは病気?原因・チェックポイント・病院へ行くべきケースを解説

海辺にたたずむ犬

愛犬のうんちがいつもより黒い場合、その原因によっては命に関わる病気が隠れているケースもあり得ます。
たかが「うんち」と考えず、愛犬の様子と便をしっかり観察し、適切な対応を心がけましょう。

後ほど詳しく説明しますが、特にうんちが「真っ黒かつ光沢がある」「粘り気がある」「鉄のような臭いがする」場合は要注意です。

この記事では、黒いうんちが出る原因や病気の可能性、病院に行くべき症状の見分け方などを、わかりやすく解説します。

目次

犬のうんちが黒くなる理由【病院に行くべきケースとは】

トイレットペーパーに巻かれた犬

黒いうんちが出る主な原因としては以下が考えられます。

【要経過観察】

  • 摂取した鉄分の酸化やその他の成分の影響
  • 便秘の影響
【要診察】
  • 消化管からの出血

それぞれ詳しく解説します。

【要経過観察】摂取した鉄分が酸化した場合

まず考えられるのが「食事」や「サプリメント」の影響です。
特にレバーや赤身肉などの肉類を多く食べた翌日は、うんちが黒くなることがあります。
また、鉄分を多く含む薬やサプリメント(鉄剤や健康補助食品)を使用した場合も、うんちが黒くなりやすい傾向があります。

これらが原因の場合は、体調に変化はなく、うんちの色も焦げ茶色から黒っぽい程度にとどまります。通常であれば、1〜2日で自然に元に戻ることがほとんどでしょう。

他に、慢性腎臓病で利用されるヘルスカーボン(植物性活性炭)は、便にそのまま排泄され便が黒く見えることがあります。内服薬として使われるクレメジン(石油系活性炭)も便中に排泄されますが、ヘルスカーボンほど黒くなることはありません。これらを利用している場合には理由が明らかなので、心配する必要はないでしょう。

ただし、黒いうんちが3日以上続いた出たり、食欲不振や元気の消失など他の異変が見られる場合は、食事以外に原因がある可能性もあるため、早めに動物病院を受診してください。

【要経過観察】便秘気味の場合

便秘によってうんちが黒くなる場合もあります。
「カチカチに乾燥している」「黒褐色で小さくコロコロした形になっている」などが主な特徴です。
これは、うんちが腸内に長くとどまることで大腸から水分が過剰に吸収され、硬く乾いた黒っぽいうんちになるためです。

活動量の低下や飲水量の減少、腸の動きの鈍さが重なるとシニア犬は便秘の傾向が強まります。

こうした状態が1〜2日続く場合は、新鮮な水を十分に用意し、散歩や室内での運動量を増やして経過観察しましょう。

なお、腎臓の機能が低下すると体が脱水傾向になり便秘の原因となります。早期にわかることで腎機能の低下を穏やかにできる可能性もあるので、シニア犬は定期的な血液検査でチェックしてもらいましょう。

 一方で「黒さが増す」「排便が困難な状態が続く」「ほかの症状(食欲不振・嘔吐など)がある」といった場合は、様子見せず動物病院を受診してください。

【要診察】消化器官からの出血が疑わしいケース

黒いうんちが出る原因には消化器官(胃や小腸)からの出血によるものがあります。

胃や小腸の内部で起こった出血により、血液の成分がうんちに混じることで、全体が炭のような真っ黒な色でねっとりとした、いわゆる「タール便」に変わります。

質感はベタつきや粘り気が強く、水っぽい場合や赤黒さが混ざることもあります。鉄のようなにおいを感じる場合も少なくありません。

こうした黒いうんちが何日も続く場合、消化管の中で出血が続いているサインです。
先ほど説明した「食事や便秘」とは異なり、放置すれば命に関わるリスクがあるため、できるだけ早く動物病院で診察を受ける必要があります。

犬のうんちが黒い時に疑われる病気

犬の透視図

食事や便秘以外の理由で黒いうんちが出て、数日続く場合…考えられる病気は以下のようなものが挙げられます。

  • 潰瘍(胃・十二指腸)
  • 胃腸炎
  • 消化器官の腫瘍
  • 急性膵炎 など

それぞれについて解説します。

粘膜が傷つき出血する胃や十二指腸の「潰瘍」

病名 兆候 原因
胃潰瘍
十二指腸潰瘍
  • タール便
    ・嘔吐、食欲の低下
    ・背中を丸めてうずくまる
    ・体に触れられるのを嫌がる
・加齢
・鎮痛薬やステロイド剤の長期使用
・腎臓病など他の病気
・異物誤飲
・鉤虫(十二指腸潰瘍)

「胃潰瘍」「十二指腸潰瘍」は、シニア犬に多い消化器官の病気です。
黒く光沢のあるタール便が認められ、嘔吐、食欲の低下、よだれ、背中を丸めてうずくまる、体に触れられるのを嫌がるなど、複数の症状が同時に現れることが多いのが特徴です。

シニア犬の場合は加齢によって胃や腸の粘膜が弱くなったり、肝臓や腎臓の病気、腫瘍などにより胃の粘膜保護機能が低下することで少しの刺激でも傷ができやすくなります。さらに、鎮痛薬やステロイド剤を長期間使用している場合、薬の副作用で粘膜が弱くなり、出血しやすくなることもあります。

また、串や骨などの異物誤飲も粘膜を直接傷つけ、その出血が黒いウンチの原因となることがあります。こうした状態を放置すると、出血が続いて重度の貧血や、胃に穴が開く(穿孔)といった症状へ進行していきます。

予防としては、薬剤の使用は必ず獣医師と相談して必要最小限にとどめること、同時に粘膜保護剤の併用や異物誤飲の防止を徹底しましょう。
黒いうんちやこれらの症状に気づいたときは、早期の治療で多くの場合回復が期待できるため、ためらわずに受診してください。

水っぽい黒〜赤黒いうんちがでる「胃腸炎」

病名 兆候 原因
胃腸炎
  • 色が黒〜赤黒く、水っぽい下痢
    ・嘔吐、発熱、食欲低下
    ・ぐったりする
・細菌やウイルス等の感染
・急激なストレス
・食事の変化
・フード管理の問題
・誤食や拾い食い

出血性胃腸炎は、うんちが黒〜赤黒く、水っぽい下痢となるのが特徴です。ときには血が混じっているように見え、吐くこともあります。

病状が進行すると、繰り返す嘔吐、発熱、ぐったりする、急な食欲低下などの症状が現れます。主な原因は、細菌やウイルスの感染や寄生虫の他、急激なストレスや食事の変化による腸内環境の乱れです。

また、フードを適切な場所で管理していなかったり、期限の過ぎたオヤツやフードを与えてしまった、散歩中に拾い食いをした、ゴミ箱をあさって何か食べたというケースも多いです。

胃腸炎を放置すると、短期間で多臓器不全などの重症化に至ることもあります。

予防では、急な食事変更を避けフードは適切な方法で保管する、衛生管理を徹底する、拾い食いやイタズラの防止、パルボウイルス感染症など重篤な胃腸炎を起こすことが知られているウイルスについては、定期的なワクチン接種を守ることが基本です。

早期発見することでできれば重症化を防ぎ、点滴や薬によって回復することが可能です。

徐々に症状が悪化していく「胃・腸・肝臓などの腫瘍」

病名 兆候 原因
胃・腸・肝臓の腫瘍
  • 黒いうんちが長期間つづく
    ・食欲の低下、体重減少など
    ・嘔吐、下痢
腫瘍による、
・臓器機能の低下
・胃腸粘膜の潰瘍
・腫瘍や粘膜からの出血

胃や腸、肝臓に腫瘍ができると、粘膜が少しずつ傷つき、持続的な出血を引き起こします。
初期はほとんど無症状ですが、進行すると黒いうんちが長く続き、食欲の低下、嘔吐、体重減少、活動量が減るなどの異変が目立つようになります。

シニア犬は腫瘍ができやすい傾向があり、放置すると腫瘍は大きくなったり拡がったりします。
出血によって重度の貧血や体力低下が起こり、命に関わる全身症状へと進行します。

決定的な予防法はありませんが、定期的な健康診断や日頃から愛犬の体調をよく観察し、早めに異変を見つけることが重要です。
腫瘍が小さいうちに発見できれば、抗がん剤や手術で切除することにより寛解を目指せる可能性もあり、治療法の選択肢が増えます。

中等度〜重度へ進行している可能性もある「急性膵炎」

病名 兆候 原因
急性膵炎
  • 黒いうんち
    ・回数の多い嘔吐
    ・食欲不振
    ・ぐったりして動かなくなる
    ・痛みにより体を丸める
    ・伏せの姿勢でお尻だけあげる
・高脂肪な食べ物の過剰摂取
・肥満、薬剤の影響
・持病による膵臓のダメージ
・炎症性腸炎
・多くは特発性(原因不明)

急性膵炎は、なんらかの原因で膵臓内の消化酵素が膵臓内で活性化してしまい、自分の膵臓組織を消化してしまう病気です。炎症が進むと周辺にも影響が及び「胃潰瘍」や「十二指腸潰瘍」といった出血を伴う合併症が出てくることもあり、逆に炎症性腸炎や肝炎・胆のう炎など膵臓周囲の組織の炎症が波及して膵炎が起こることもあります。

黒いうんちとあわせて、嘔吐や食欲不振、ぐったりして動かなくなるなどの症状が同時に見られた場合は要注意です。

原因は、高脂肪な食べ物の摂取や肥満、薬剤の影響、持病による膵臓のダメージ、絶食や飢餓後の急な食事などによる発症も知られていますが、特発性という原因不明の急性膵炎が最も多いとされています。

放置すれば、重い脱水症状や体温の低下、意識がもうろうとするなど、ショック状態に陥り命を落とす危険もあります。
高脂肪の食事を避け、適切な体重管理と定期的な健康チェックを心がけることが予防のポイントです。

病院での受診が必要な症状

餌を遠巻きに見るジャックラッセルテリア

色だけではなく、愛犬のうんちについてチェックしておきたい症状はたくさんあります。
以下のような症状がないかを意識し、気になる部分があれば受診するようにしましょう。

  • 便の回数や量が減った/増えた
  • 赤い便(血便)が混ざっている
  • 下痢をしている
  • 黒いうんちが2〜3日続いている
  • 便の色が黒く濃く/白くなっている
  • 元気や食欲がない
  • 嘔吐する
  • 体重が減っている
  • 体を触ると嫌がる
  • 便の臭いが変化した(悪臭がする)
  • 排便がスムーズではない
  • 異物を誤飲した可能性がある
  • 中毒を起こしそうな物を口にした

便の色や形状についてはスマホ等で撮影しておくと診察時の判断がスムーズになります。

この記事のまとめ

ふんばるジャックラッセルテリア

黒いうんちは、特に心配不要な食事の影響から、重篤な病気の可能性まであります。

<黒いうんちが出る原因>

【要経過観察】

  • 摂取した鉄分の酸化やその他の成分の影響
  • 便秘の影響
【要診察】
  • 消化管からの出血

特に「色が真っ黒」「粘り気がある」「血が混じる」などの特徴がある場合は、以下の病気の可能性を否定できません。様子見はせずに、専門医へ相談してください。

黒いうんちが出る病気の可能性

  • 潰瘍(胃・十二指腸)
  • 胃腸炎
  • 消化器官の腫瘍
  • 急性膵炎 など

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