専門家からのアドバイス
2025/07/09
その不調…歳のせい? 愛犬の「病気or老化」を見極めるチェックガイド

シニア期に差しかかると、愛犬の体には目に見えるものから隠れた兆しまで、様々な変化が訪れます。
それらは大きく「加齢による自然な衰え」と「病気の始まり」に分けられますが、現実には線引きが難しく「歳のせいかな」と楽観視して見逃されがちです。
では、老化と病気の境目をどう見極めればいいのか。モノカどうぶつ病院の小林清佳先生に、そのポイントを伺いました。
小林清佳
獣医師
日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科卒業。
複数のクリニックでの勤務を経て、2009年4月に杉並区宮前で現「モノカどうぶつ病院」を開院。
病院での診察のほか、往診にも対応している。
目次
加齢にともなう変化…その裏に潜む病気のサイン

「病気を見分けるには、変化のスピードや各種検査の結果を注視することが大切です。短期間で急に変化した場合や、血液、尿検査の数値や所見が大きく変化している場合は、病気の疑いが強くなります」(小林先生※以下すべて同)
とはいえ、どんな変化に注意すればいいのか分かりにくいもの。ここからは、シニア犬によく見られる老化現象の中でも、特に病気の可能性が潜んでいるケースが多い代表的な例をご紹介します。
ここからは、シニア期に多く見られる具体的な行動変化について、一つひとつ見ていきましょう。
それぞれの変化が示す病気の可能性と、見極めるポイントを解説します。
①散歩を嫌がる【心臓病や呼吸器疾患、関節炎などの可能性あり】

シニア犬は筋肉量と持久力が落ち、関節も硬くなりやすいため、歩幅が小さくなったり歩くペースが遅くなったりします。
以前は平気だった距離でも途中で座り込んだり、引き返そうとする姿も見られます。
「急に立ち止まる、咳が続く、舌が紫色になるといったサインがあれば、心臓病はもちろん、肺炎や肺腫瘍、慢性気管支炎などの可能性もあります。歩き始めからぎこちない場合は、関節炎や変形性脊椎症などの疑いも。同じ症状が数日続くようなら、早めに動物病院で検査を受けてください」
疑われる病気 | サイン(原因) |
---|---|
関節炎 | ●長距離を歩きたがらない (関節の痛み) |
変形性脊椎症 | ●背中を丸め、 途中で休憩をせがむ (背腰の痛み) |
心臓病 |
●急に立ち止まり咳、 舌が紫色になる (心肺機能低下) |
肺炎 | ●歩き出してすぐ息が荒くなり座り込む (肺の炎症) |
肺腫瘍 | ●空咳や息切れで短距離でも休む (肺に腫瘍性病変) |
慢性気管支炎 | ●運動でガーガーと咳き込み 動きを止める (気道の慢性炎症) |
受診の目安
「急に立ち止まる、咳が続く、舌が紫色になるといったサインが2日連続で見られる場合や、歩き始めからぎこちなさが2日以上続く場合は、動物病院で検査を受けてください」
➁段差を嫌がる【椎間板ヘルニアやパテラなどの可能性あり】

後ろ足の筋力が衰えると、これまで軽々と上り下りしていた階段やソファの前で立ち止まったり、尻込みしたりするしぐさが目立つようになります。
「急に段差を嫌がる場合、膝蓋骨脱臼や股関節形成不全、椎間板ヘルニアなど背骨や神経のトラブルに加え、関節炎や変形性脊椎症といった慢性関節疾患の可能性もあります。悪化させないために、変化に気づいたら早めに動物病院で診てもらいましょう」
疑われる病気 | サイン(原因) |
---|---|
膝蓋骨脱臼 (パテラ) |
●階段でスキップ歩様、 段差を拒否する (膝が外れて痛む) |
股関節形成不全 | ●立ち上がるのに 非常に苦労する (股関節の不安定化、痛み) |
神経障害 | ●立ち上がりでふらつき、 段差で転びそうになる (神経伝達障害) |
椎間板ヘルニア | ●突然「キャン」と鳴いて 足が動かなくなる ●足がもつれる(ひきずる)、 ふらつく等 (脊髄の圧迫) |
変形性脊椎症 | ●背腰が硬く階段で動きが鈍い (背骨の可動域の制限) |
関節炎 | ●動き出しや起立、 着座に時間がかかり、 休憩を挟みがちに (関節の痛み) |
受診の目安
「段差の上り下りを急に嫌がる様子が3日以内に改善しない場合は、早めに動物病院で診てもらいましょう」
③立ち上がるのが辛そう【変形性関節症などの可能性あり】

シニア期になると関節の軟骨がすり減り、筋肉も痩せて力が入りにくくなるため、起き上がったり向きを変えたりする動作がゆっくりになります。
「急に悪くなることもあるので、3日以上ぎこちなさが続く場合は、変形性関節症や変形性脊椎症、関節炎の可能性もあります。クッシング症候群や甲状腺機能低下症などでも踏ん張りが利きにくくなるので、血液検査も検討してください」
疑われる病気 | サイン(原因) |
---|---|
変形性関節症 | ●動作がぎこちない、 寒い日や運動後に痛みが強まる (関節軟骨の摩耗、変形) |
変形性脊椎症 | ●背中、腰、首を伸ばしにくく 動きが硬い (脊椎に骨棘が形成) |
関節炎 | ●関節が腫れて熱を持ち、 触ると痛がる (関節内の炎症) |
クッシング症候群 | ●筋力低下で立ち上がりや動作がぎこちなくなり、腹部が膨らみやすい (コルチゾール過剰による筋萎縮・腹筋の菲薄化) |
甲状腺機能低下症 | ●筋力低下や疲れやすくなる、 体重増加 (甲状腺ホルモンの不足で代謝が低下) |
受診の目安
「歩き方がぎこちない、ふらつく、階段やソファを嫌がる様子が3日以上続くようなら動物病院で検査を受けましょう。「後肢がもつれる」「爪を擦る」「足先が浮かない」といった軽い麻痺(不全麻痺)が現れる場合は当日中に受診してください」
④睡眠中に異変が出る【心臓、呼吸器疾患の可能性あり】

シニア犬は体力と活動量が落ちるため、若い頃より睡眠やまどろむ時間が自然と増えます。
日中にうたた寝をしたり、散歩後すぐ横になる程度なら、まずは加齢による自然な変化と言えます。
ところが、睡眠中に異変がある場合は別のトラブルが隠れていることも。
特に次のような変化があった場合には注意しましょう。
- いびきが急に大きくなる/寝息が荒い
- 夜中の徘徊や無目的な吠え
- うつぶせ姿勢のみで寝ている
それぞれについて解説します。
1.いびきが急に大きくなる/寝息が荒い
「いびきが以前より大きくなる、あるいは寝息が荒く速くなったら要注意です。軟口蓋過長(*1)や咽頭、喉頭の虚脱(*2)、肥満による気道圧迫に加え、甲状腺機能低下症やクッシング症候群で咽頭周囲の筋力が落ちると、就寝時に気道が狭まり呼吸音が変化します。
一方、気管虚脱は興奮時や運動時に「ガーガー」という咳、呼吸困難が出やすく、安静時は比較的静かなことが多いため、日中の様子も合わせて確認しましょう」
*1軟口蓋過長(なんこうがいかちょう)…上あご奥にある軟口蓋が生まれつき長く、呼吸時に気道へ垂れ込んで空気の通り道を狭める疾患。短頭種や肥満犬に多く、いびき、ガーガーという呼吸音が特徴。
*2咽頭、喉頭の虚脱…咽頭や喉頭(声帯周辺)の軟部組織が呼吸時に吸い込まれて潰れ、空気の流れを妨げる状態。激しいいびきや努力呼吸、重症ではチアノーゼや失神を起こす。
2.夜中の徘徊や無目的な吠え
「夜間に落ち着きなく歩き回る、理由もなく吠え続ける、昼夜逆転するといった行動は、認知機能不全症候群(CDS)の代表的なサインです。この病気では、方向感覚や短期記憶が低下します。そのため、暗い室内で自分の位置がわからず不安が強くなり、結果として睡眠が断続的になってしまいます」
3.うつぶせ姿勢のみで寝ている
うつぶせ姿勢しか取らず、左右どちらかを下にして横になれない場合も要注意です。
その体勢が呼吸を楽にする姿勢になっている場合は、肺や心臓にトラブルを抱えていることがあります。
「睡眠は健康のバロメーターです。少しでもいつもと違うと感じたら、早めに動物病院でご相談ください。寝ている様子や呼吸音をスマホで撮っておくと、診察時に獣医師が状態を把握しやすくなります」
疑われる病気 | サイン(原因) |
---|---|
呼吸器疾患 (肺がんや軟口蓋過長) |
●いびきが急に大きくなり呼吸が浅く速い(気道が狭くなる) ●横になれずうつ伏せ姿勢で小刻みに眠り動くと咳やチアノーゼが出る(呼吸困難) |
甲状腺機能低下症、 クッシング症候群 |
●眠りが浅く、いびきや荒い寝息が続く (肥満と筋力低下で気道が狭まる) |
認知機能不全症候群 (CDS) |
●夜間に覚醒し無目的に徘徊する(脳機能低下) |
受診の目安
「いびきが急に大きくなる、寝息が荒い、横になれずうつぶせ姿勢しか取れない状態が2夜連続で続く場合は、動物病院でご相談ください」
⑤急な食欲不振、多飲【腎臓病、痛みを伴う歯周病などの可能性あり】

シニア犬では、嗅覚や味覚の衰え、運動量の低下などによって食欲が減ることがあります。
しかし、「昨日まで完食していたのに今日はほとんど食べない」「突然水を飲む量が増えた」といった急な変化には注意が必要です。
「多飲多尿に加えて体重が減少している場合は、腎臓病、糖尿病、クッシング症候群、あるいは子宮蓄膿症(未避妊犬)など内臓やホルモンの病気が疑われます。
拒食や嘔吐を繰り返す場合は、胆嚢粘液嚢腫や肝炎など肝胆道系のトラブルの可能性もあります。
また、食欲はあるのに噛めない様子を見せるときは、歯周病や口腔内の痛みが原因かもしれません」
疑われる病気 | サイン(原因) |
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腎臓病 | ●多飲多尿が続き体重が減る (腎機能低下) |
糖尿病 | ●食欲の増減、体重減少、多飲多尿が見られる (インスリン不足による高血糖) 未治療ではケトアシドーシスを起こすことがある。 |
クッシング症候群 | ●異常な食欲、多飲多尿、腹部膨満、皮膚の薄化が現れる (副腎皮質ホルモン過剰) |
胆嚢粘液嚢腫 | ●吐き気、食欲不振、黄疸。 進行すると胆嚢壁が壊死し胆嚢破裂→胆汁性腹膜炎(*2)で命に関わる (胆汁がゼリー状に固まり出口を塞ぐ) |
肝炎 | ●食欲不振、嘔吐、黄疸が出る (肝細胞の炎症、血液検査でALT/AST上昇) |
子宮蓄膿症 (未避妊犬) |
●発熱、多飲多尿、陰部から膿状分泌物が出る (子宮に膿がたまる) |
歯周病 | ●食べたいのに噛めない、口臭や出血がある (歯肉の炎症) |
(*1)ケトアシドーシス…インスリンが極端に足りなくなり、体が脂肪を大量分解して生じる「ケトン体」で血液が酸性に傾いた危険な状態。甘酸っぱいアセトン臭の息、激しい嘔吐、深く早い呼吸が特徴で、放置すると急速にショックや昏睡に至るため、直ちに点滴とインスリン治療が必要となる
(*2)胆汁性腹膜炎(たんじゅうせい ふくまくえん)…胆嚢破裂などで腹腔内に漏れ出た胆汁が、腹膜を刺激し、炎症が起きた状態。激しい腹痛、発熱、ショックを伴い、緊急手術と集中治療が必要となる命に関わる合併症。
受診の目安
「食欲ゼロの日が丸2日続いたり、飲水量が体重1kgあたり1日100mL超の状態が3日以上続くときは迷わず病院へ連れていきましょう」
⑥おしっこの回数が増える【腎臓病や糖尿病などの可能性あり】

シニア期に入ると、膀胱の収縮力が弱まり、骨盤底の筋力も落ちるため、膀胱に溜めておける尿量が少なくなります。
その結果、若い頃よりトイレに行く回数が増えていきます。
「頻尿が病気によるものかどうかは、回数と一度に出る量をセットで見るのがコツです。
回数が多く、しかも1回の量も多い場合は、多尿の可能性が高く、腎臓病、糖尿病、クッシング症候群など多飲多尿を起こす病気を疑います。目安は体重1kgあたり1日100mL以上の飲水が数日続くかどうか。
回数は多いのに毎回少量しか出ないときは、膀胱炎や膀胱結石など膀胱そのものに刺激や痛みがあるケースが考えられます。受診の際は、回数と一度の量をメモしておくと診断がスムーズになります」
疑われる病気 | サイン(原因) |
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腎臓病 | ●尿が薄くなり多尿が続く、脱水を補うため多飲になる (腎機能低下) |
糖尿病 | ●大量に尿をし水をがぶ飲みする (高血糖による浸透圧利尿) |
クッシング症候群 | ●多飲多尿、腹部膨満、皮膚の薄化が現れる (副腎皮質ホルモン過剰) |
膀胱炎 | ●少量で何度もトイレに行く、血尿や排尿時の痛みが出る (膀胱粘膜の炎症) |
膀胱結石 | ●排尿間隔が短くなり血尿や排尿困難を示す (膀胱壁の刺激) |
前立腺肥大/前立腺炎 (未去勢犬) |
●少量頻回排尿、血尿、排尿痛、便秘や後肢のこわばりが出ることがある (前立腺の腫大、炎症) |
子宮蓄膿症 (未避妊犬) |
●多飲多尿、発熱、食欲不振、陰部から膿状分泌物や腹部膨満が見られる (子宮に膿がたまる) |
受診の目安
「排尿回数が急に増える、粗相が続くといった症状が2〜3日続くようならかかりつけ医に相談しましょう。ただし雄犬で排尿量が少ない、出づらいときは尿道結石による閉塞の可能性もあります。閉塞は時間勝負の緊急疾患のため、1〜2日以内でもすぐ受診してください」
⑦粗相が増える【認知機能不全症候群、膀胱トラブルなどの可能性あり】

シニア期になると骨盤底の筋力が衰えたり、関節痛で移動が遅くなったりするため、トイレまで我慢できずに粗相することがあります。
「場所を選ばず排泄するようになったり、粗相が続くときは病気が隠れている可能性があります。認知機能不全症候群(CDS)では排泄場所を忘れやすくなり、膀胱炎や膀胱結石のような膀胱トラブルでも尿意が切迫して粗相が増えます」
疑われる病気 | サイン(原因) |
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認知機能不全症候群 (CDS) |
●排泄場所を忘れて家中で失禁する (脳機能の低下による認知障害) |
膀胱炎 | ●尿意が切迫して間に合わず粗相が増える、血尿や排尿時の痛みがよく見られる (膀胱粘膜の炎症) |
膀胱結石 | ●排尿回数が増え粗相や血尿、痛みが出ることがある (膀胱壁への刺激、尿路の障害) |
受診の目安
「粗相や失禁が急に増え、2日連続したら受診を考えましょう」
⑧反応が鈍い【認知機能不全症候群や外耳炎などの可能性あり】

シニア期になると、愛犬の反応が鈍くなり、呼びかけても振り向かない、遊びやスキンシップにもあまり反応を示さなくなることがあります。
「歳のせいかな」と思いがちですが、実はこうした変化の裏に病気が隠れているケースも少なくありません。
「急に反応が鈍くなった場合は、認知機能不全症候群(CDS)や慢性疼痛、重度の外耳炎などが疑われます。昼夜逆転や無目的な徘徊が続く場合は認知機能の低下を、呼びかけに対して左右の反応に差があれば耳のトラブルも考えられます」
姿が見えると尻尾を振るのに、声だけでは反応が鈍い場合は、加齢による聴力の低下や外耳炎が関係していることがあります。
「外耳炎が鼓膜に及ぶと片耳だけ反応が鈍くなることもあるので、耳をかゆがるしぐさや独特のにおいにも注意してください」
疑われる病気 | サイン(原因) |
---|---|
認知機能不全症候群 (CDS) |
●呼びかけへの反応が鈍くなり徘徊や昼夜逆転が見られる (脳機能の加齢変化) |
慢性疼痛 | ●触れられると逃げたり怒ったりする、遊びや交流が減る (関節、歯、内臓など長期的な痛み) |
重症化した外耳炎 | ●頭を振る、耳を掻く動作が増え、悪臭や強いかゆみが続く(耳道の炎症) ●炎症が鼓膜に及ぶと片耳だけ聞こえなくなる場合がある(伝音性難聴) |
「昼夜逆転や徘徊、呼びかけても反応が鈍い状態が3日連続した場合や、片耳だけ反応が鈍い状態が2日続く場合は、早めに動物病院へ相談してください。痛みが疑われる場合も早めの受診が大切です」
⑨突然噛みつく【慢性疼痛などの可能性あり】

シニア期になると関節や歯、内臓に痛みを抱えやすいほか、白内障や緑内障の進行で視界が狭くなったり、最終的に盲目(光を感じにくい状態)になることがあります。
見えづらい犬は顔まわりに手が近づくと驚いて威嚇、噛みつきに転じることが少なくありません。
また、脳機能の低下により不安、混乱が強まるため、若い頃には見られなかった攻撃行動が現れる場合もあります。
「相手や状況を選ばず無差別に噛もうとするなら、脳の老化による認知機能不全症候群(CDS)が疑わしいです。一方、触られた特定の部位にだけ怒る場合は、関節炎や歯周病などの慢性痛が背景にあることが多いです。いずれにせよ『突然噛む』のは愛犬からのSOSサイン。早めに検査を受け、原因に合わせた対策を取りましょう」
疑われる病気 | サイン(原因) |
---|---|
認知機能不全症候群 (CDS) |
●空間や人物の認識が曖昧になり、無差別に攻撃行動が出る (脳機能の低下) |
慢性疼痛 (関節炎、歯周病など) |
●触られた特定の部位で防御的に噛む。 普段は穏やかだが痛みに反応して攻撃的になる(慢性的な痛み) |
視覚障害 (白内障、緑内障など) |
●視界が狭まる、盲目に近づくと顔まわりに手が近づいた瞬間に驚いて威嚇や噛みつきが出る。 家具や人にぶつかる、段差で躊躇するなど行動の変化がみられる(視覚情報の減少) |
受診の目安
「攻撃行動が出た当日中に受診してください。放置すれば人や他の動物に深刻なケガを負わせるリスクがあります」
自宅でできる健康診断

日々の変化は飼い主の主観だけだと見落としがちです。週1回、数字を意識した健康管理を習慣にしましょう。
項目 | チェック方法 | 正常の目安 |
---|---|---|
体重&BCS* | ●体重:毎週〇曜日の朝ごはん前に体重を測る。 ●BCS:肋骨や腰、お腹まわりを手で触って体型を確認 |
●±3%以内 ●BCS=肋骨が軽く触れられる、上からみてウエストの適度なくびれが確認できる |
食餌量 | 1日分を計量して与え、残した量を引く | 完食(残食なし) |
飲水量 | 24時間分の水の減りを測る | 体重1kgあたり50〜60ml/日 |
排泄 | ●尿:回数、色。量 ●便:硬さ、回数、量、色 |
●尿:3〜5回、淡黄透明 ●便:黄〜茶色の固形 |
*BCS(ボディコンディションスコア)…BCSは、犬の体型を「痩せすぎ」「ちょうどいい」「太りすぎ」と5段階で評価する指標
「病気のサインは、症状が出るより先に数字に変化が現れる場合が多いです。週1回のチェックで『愛犬の普通状態』を知っておくだけでも、受診時に判断がしやすくなります。
特に見落としがちなのが、便の量と色です。どちらも個体差があるので、具体的な数字ではチェックできないので、日々観察し、普通の状態を把握しておくことが欠かせません。
診察には写真や動画も大きなヒントになります。全身の動きと患部の接写、10秒ずつスマホで撮っていただければ十分です」
BCSとは?初心者でもできる肥満度チェック
犬は年齢とともに筋肉が落ち、脂肪がつきやすくなります。
体重計の数値が変わらなくても、実際には「隠れ肥満」が進んでいたり、筋肉が落ちて動きづらくなっていたりするケースが少なくありません。
病気のリスクを早期に察知するには、触って見て評価するBCS(Body Condition Score)が重要です。

「体重の数字だけでは本当の体型はわかりません。肋骨が指先で軽く触れられるか、腰にくびれがあるか、見た目と手ざわりで判定するBCSも必ずチェックしてみましょう」
簡単にできる!BCSチェックの3ポイント
ステップ | チェック方法 | 理想の状態 |
---|---|---|
①肋骨を触る | 脇から胸を包むように触って肋骨に触れるかを確認 | 軽くなでるだけで肋骨がわかる |
②上から見る | 背中側から腰のくびれの有無を確認 | うっすらと腰にくびれがある |
③横から見る | お腹が後ろに向かって引き上がっているかを確認 | 胸の一番低い所から後ろ脚の付け根まで、 お腹のラインが地面に対してゆるい上り坂になっている |
BCSには、5段階法と9段階法の2種類がありますが、どちらも真ん中のスコアが理想体型に当たります。
本記事では5段階法を基準にし、BCS3を目標ラインとします(9段階法ではBCS4〜5がほぼ同等)。
この体型を維持できれば、関節や内臓への負担が少なく、シニア期も動きやすい体を保ちやすくなります。
「ぽっちゃりに見慣れていると、BCS3が痩せすぎに感じるかもしれませんが、軽く触れて肋骨をうっすら確認できる状態が健康の目安です。指が沈んで肋骨に届かない場合は脂肪がつき過ぎ。月に1回、『肋骨、腰、お腹』を手と目でチェックする習慣をつけましょう」
気づきと行動が延ばす、シニア犬の健やかな時間

老化の影に、病気は潜んでいます。
今日の「少し歩くのが遅い」「食欲が落ちた」「水をよく飲む」といったささやかな変化こそが、早期発見の入り口です。
仕草や食事、体型を「見て、触れて」定期的に観察し、気になるサインが数日続くときは迷わず受診しましょう。
小さな気づきと早めの一歩が、愛犬のシニアライフをより長く、穏やかに支えてくれるはずです。