取材/ストーリー
2025/04/07
11歳で右眼球を摘出。「病院に行くのも怖かった」と話す当時の心境と、3年が経った現在の生活とは

11歳の頃、右眼球に腫瘍ができ、3ヶ月後に右眼球を摘出したビーグルのメグ。
眼球の中にできた腫瘍が悪性か良性かは、摘出しないとわからない。
それを知ったオーナーの永吉さんは「病院に行くのも怖かった」と当時を振り返る。
それから3年が経ち、「右目を取ったことをメグも忘れていると思う」と話すが、現在に至るまでどんな道のりを歩んできたのか伺った。
メグのプロフィール
●年齢/性別:14歳/女の子
●体重:11.6kg
●既往歴
・7歳で腰のヘルニア。その後2回発症
・13歳で馬尾症候群を発症
・11歳で右眼球の摘出手術を受ける
目次
その目はとても大きくて、とてもかわいかった

永吉さんがメグを迎えたのは14年前。
娘さんが、スヌーピーのモデルとなっているビーグルを飼いたいと言って、その後ペットショップを何店舗か回り、メグに出会った。
当時のメグのことを「目が大きくて、体は小さくて、とてもかわいかった」と話す永吉さん。
大ファンだったメグ・ライアンにちなんで「メグ」と名付け、永吉家の新たな生活が始まった。

メグの性格はやんちゃで元気いっぱい。
ソファを掘ることが大好きで、穴が開いては買い替えて…を繰り返し、今使っているソファは3台目だという。
また散歩が大好きで、散歩時間は幼い頃から毎日2時間している。
ちなみに永吉さんは日中は仕事をしており、仕事前に30分、帰ってきてから1〜2時間散歩に行く生活を送ってきた。メグのことを元気いっぱいと話す永吉さんも、なかなかタフだ。
7歳でのヘルニアをきっかけにごはんはヘルシーに

その後も元気いっぱいに過ごしてきたメグだが、7歳のときに腰のヘルニアを発症した。
当時の症状を「のそのそと歩いていて、明らかに元気がなかった」と話す。
その後すぐに病院へ行き、痛み止めを服用しながら安静に過ごしているうちに症状は改善した。
苦労したのはその後だった。
ヘルニアの再発を防止するには体重管理が大事になる。
しかしメグは食べるのが好きで、ダイエットのためにフードの量を少し減らしただけでも、気づいて要求吠えしてくる。
「結局、ヘルシーなフードに変えて、茹で野菜でかさ増しするようにしました。
メグにとっては、ごはんの味より量のほうが重要だったみたいです(笑)」
「ごはんを楽しく食べてほしい」と思っていた永吉さんは、量を減らさずになんとか体重をコントロールしてきた。
気づいてしまった、右眼の黒い腫瘍

11歳になったある日、メグの右眼球に黒いデキモノがあることに気付いた。
最初はアザか、加齢によるものなんだろうと、気にも止めなかったが、その後も右目だけずっと涙が垂れていて、「なんとなく嫌な予感がした」と当時を振り返る。
それから、永吉さんは目の病気について調べた。どんな病気の可能性、治療法があるのか。
その中で「目の中にできた腫瘍が悪性か良性かは、摘出しないとわからない」と知った永吉さんは「このままだと眼球を取ることになると思って、病院に行くのも怖くなってしまった」と話す。
しかしその間にも、眼球の腫れはどんどん大きくなっていく。
その後、家族と相談して、眼科のある大きな病院に行くことにした。
「先生からは『眼球を摘出しないと腫瘍が悪性か良性かわからないこと』、そして『これだけ腫れているとメグにも痛みがある』と告げられました」。
永吉さんは、その当時の心境を次のように話す。
「私以外の家族は『メグのために摘出した方が良い』と即決でした。でも私は決めきれなかった。
迷っている間にも、目の腫れはどんどん大きくなっていて、眼球の形もラグビーボールのようで、とにかく痛そうでした。摘出してあげたほうが良いと、頭で理解できても心が追いつかなかったんです。」
そこから、どのように心の整理をしたのだろうか。
「偶然、知人の家に眼球摘出を経験したコがいたので、話を聞きに行きました。
すると『取って正解だった、普通に生活できてる、取ったことなんて忘れてるよ、心配しなくて大丈夫だよ』と言ってもらえて。その言葉が大きかったです。」
永吉さんは「悩んでいるのはメグのためか、それとも自分のためか」と考えたという。
最終的には「考えても選択肢は一つしかない」と思って、メグのために摘出することを決めた。

メグには私が見えているから

摘出手術を終え、3日後にメグは退院した。
退院直後は痛そうにしていたものの、日々の生活において不自由することはほとんどなかった。
「強いていうなら、顔が右に向きやすく体も右に進みがちなので、散歩中は私が右側を歩くようにしました」
また、手術後はリビングで一緒に寝るようになったという。
「幼い頃から階段を上り下りできないので、2階の寝室ではなくリビングでひとりで寝てもらってたんです。
でも手術してからは、安心できるかなと思ってリビングで一緒に寝るようになりました」
メグは、そんな永吉さんの優しさに甘える。
「毎朝5時に私を起こしに、小さい声で『ワン(起きて)』って言ってくるんです。
でも私が眠いので、鰹節を入れたお水を飲んでもらって、二度寝してもらっています(笑)」
その後、6時半から朝の散歩へ行き、ごはんを食べて、永吉さんは仕事へ行く。
帰ってきたらごはんを食べて、再び散歩に行く。幼い頃から続けている習慣は、今でも変わらない。
「犬は今を生きていると言われますけど、それはメグも同じ。眼球を取ったことをメグも忘れていると思います。なんなら取ったことを分かってないんじゃないかな?」
術後も人を怖がることなく、お友達にも今までどおりだという。
付け加えるように「ごはんもガツガツ食べてます」と永吉さんは笑いながら話す。

ノンストップで島を一周!
永吉さんとメグは、休日になるとクルマで少し離れた公園へ行き、散歩を楽しんでいる。
「いつもと違うところへ連れて行くと、嬉しそうによく歩くんですよ」と、メグのためなら多少の苦労もいとわない永吉さん。

さらに、家族旅行も大好きだという。
「旅行の準備をしていると、『今日はどこ行くの?メグも一緒だよね?』と言わんばかりに、いつもと違う行動を察知してストーキングしてきます(笑)」
去年の夏は、愛知県にある日間賀島へ旅行に行った。

「すごかったんですよ、朝から晩まで元気で。
1周5.5kmもある島の外周を、ほぼノンストップで走って、人間のほうが疲れました(笑)」
受け入れ難い現実と向き合ってきた永吉さんとメグ。
当時のことを「怖かった」と振り返るが、今では毎日が楽しそうだ。
メグは今年の4月で15歳になる。
今でも元気いっぱいだと話す一方で、年齢を感じる場面も増えてきたという。
「最近耳が遠くなってきて、私が帰宅しても気づかないことが増えたんです。
でも『ごはん』とか、おやつが入った冷蔵庫を開ける音には気づく。都合の良いことだけ聞き取るんです(笑)」
日々のささいな出来事も、年齢を重ねた変化も、永吉さんにとってはその一瞬が宝物。
家族旅行を満喫したメグを見つめながら、「こんなに喜んでくれるなら、またそういう旅行がしたいな」と話す永吉さんは、メグのためにできることを見つけて、とても幸せそうに見えた。