取材/ストーリー
2025/05/02
5,000日以上続けている「健康管理ノート」。備えの習慣が病気の早期発見に繋がった

「これが、ハナを迎えた日からつけている『健康管理ノート』です」
そう話すのは、オーナーのハナママさん。
ミニチュアダックスフンドのハナちゃんを迎えた日から5,000日以上、日々の体調や様子をノートに記録している。
この小さな備えの積み重ねが、後に病気の早期発見につながり、ハナちゃんの健康を支えてきた。
ハナちゃんのプロフィール
●年齢/性別:15歳の女の子
●体重: 5.0kg
●既往歴:
・3回ヘルニアに。4歳のときに腰、11歳で頸椎、12歳でもう一度腰
・12歳で甲状腺機能低下症、腎不全を発症
目次
「他のコに替えましょうか?」なんてあり得ない!

「実家で飼っていた愛犬を、自分の腕の中で看取ったことがあって…。
そのときの悲しかった経験から『もう犬は迎えない』と決めていたんです」
犬と暮らす選択肢がなかったはずのハナママさんは、犬好きな娘さんと出かけたホームセンターでハナちゃんと出会い、一目惚れした。
「『この子を連れて帰りたい!』と思ったんです。後にも先にもこんな気持ちになったのは初めてでした」と当時の衝撃を振り返る。
その後、家族会議を経て晴れてハナちゃんとの生活がスタートした。
しかし、迎えてすぐにハナちゃんのトイレを片付けていると血便に気がついた。
ショップにこれまでの健康状態などを問い合わせたところ「別のコに替えましょうか?」と言われたそうだ。
「ありえないですよね。絶対に、この子と一生一緒にいようと決めていましたから」
「ハナちゃんを迎えた日の決意」の強さは、今回お話を伺う中でもたくさん伝わってきた。
ヘルニアになってから体重測定が日課に

食欲旺盛。甘えん坊でちょっぴりビビリ。そして人が大好き。
そんなハナちゃんが4歳になったある日、散歩から戻った息子さんから「ハナちゃんが階段を上りにくそうにしていたよ」と聞く。
「気になって抱っこしたら『キャン』と声をあげたので、おかしいと思って。すぐ病院へ連れて行きました」
結果は腰のヘルニアだった。
先生からは「とにかく動かないように」と言われ、散歩だけでなく、目を合わせたり声をかけたりすることも禁止された。
「構ってあげられなくて…辛い期間だった」とハナママさん。動かないよう徹底した結果、手術することなく症状は改善した。
その後はヘルニアの再発を防ぐため、タイルカーペットを敷き、二本足立ちをさせない、縦抱っこもしない。
さらに体重の増加を防ぐために毎日体重を測り、ノートに記録するようになった。
朝ごはんの前に体重測定をしているため、ハナちゃんも「体重を測ればごはんがもらえる」と思い、自分から体重計に乗るように。今ではすっかり慣れた様子だ。
予防接種時の血液検査で見つかった「腎不全」

その後も日々の体重チェックを続けていたハナちゃんだが、12歳の時に受けた血液検査では「腎不全」の初期段階と診断された。
腎不全は進行すると命に関わるため、早期発見と治療が重要になる。
しかし初期段階では症状がないことが多く、見つけるのは難しい。ハナちゃんの場合も、目立った症状はなかったという。
その中で早期に気づけたのは、毎年欠かさず受けていた血液検査のおかげだった。
ハナママさんは、フィラリア症の予防接種前に受ける血液検査の際、全身の健康状態についてもチェックしてもらっていた。
「まとめて検査することで、ハナへの負担も減る」と考えての行動だ。
診断を受けてからは食事療法が始まった。
療法食に変わっても、ハナちゃんは残さず食べている。
「『本当に味がわかってるかな?』と心配になるくらい、なんでも食べる」と笑って話すハナママさんだが、「なるべく美味しいものを食べてほしい」という思いから、先生と相談した上で腎臓にやさしいレトルトパウチなどをトッピングしているという。

またご褒美にあげるおやつも、先生と相談しながらあげている。
「肉類は腎臓に良くないリンが含まれるので避けて…など注意していますね」
ハナちゃんとハナママさんにとって、食事やおやつは大事なコミュニケーションのひとつ。続けられるように工夫してきた。
食事量を減らしても…なぜか止まらない体重増加

食事療法が始まってしばらく経ったある日、ハナちゃんの体重が徐々に増え始めた。
一般的に腎不全を発症すると、腎臓機能の低下によって栄養の吸収が不十分になり、体重が減ることが多い。しかしハナちゃんは違った。
「体重が少し増えたので、ごはんの量を減らしたんです。
それでもなぜか体重が増えていって。これはおかしいと思って、先生に診てもらいました」
検査の結果、「甲状腺機能低下症」と診断された。
甲状腺ホルモンの不足によって基礎代謝が低下し、体重が増えていたという。
初期症状は体重が増える、抜け毛が増える、元気がなくなるなど加齢と勘違いされやすい。
一方で進行すると、心不全や呼吸不全につながる可能性がある病気だ。
毎日体重を測っていたハナママさんは、この場面でも病気のサインを見逃さなかった。
5,000日以上のハナが記録された「健康管理ノート」
体重増加の異変にすぐ気づいたハナママさんは、ハナちゃんを迎えた日から「健康管理ノート」をつけている。
基本的に「その日の食欲、うんちの状態、出来事」を記録する。
ヘルニアになってからは体重を毎日記録するなど、記録する項目はその時々に合わせて変えてきた。

甲状腺機能低下症と腎不全を患ってからは「飲んだ水の量」と「おしっこの量」も記録しているという。
多飲多尿は病気の進行サインの一つ。見逃さないように注意しているのだ。
飲んだお水の量は、水を注いだときと飲み終えたときの目盛りを比べて記録。
おしっこの量は、その日に使ったトイレシートをまとめて量り、使用前と比べてどれだけ重くなったかを記録している。
「娘からは、よく『ハナが監視されている』と言われますけど(笑)」と謙遜するハナママさんだが、日々の積み重ねがハナちゃんの健康を支えていた。
15歳になったハナとの日々

15歳になったハナちゃんは毎朝6時半ごろに起きて、体重を測ったら朝ごはんを食べる。
その後は、小豆カイロを使って腎臓を温める「腎活」をして、2時ごろまでお昼寝。
起きた後は、ハナちゃんが好きなミニタオルを使った遊びをする。

「ミニタオルの中には極小フードが入っていて、毎日何十枚も解きます。
何十枚も結ぶのはなかなか大変ですが、一緒に遊ぶのが楽しくて続けています(笑)」
遊ぶ中で食べたフードの分だけ、夜食の量を減らしているという。体重管理も抜かりない。
「最近はおしっこを失敗することもあるけど、それはそれでまた可愛いんですよね。
『はみ出てるぞー』って言って(笑)」
今回の取材中、「こんな話もある、あんな話もある」とさまざまな話をしてくれた。
その姿からも、ハナちゃんとの日々を心から楽しんでいることが伝わってくる。
実際、見せてもらった健康管理ノートの中には、
「初めての手作り洋服がキュート」
「私のヒザの上でネンネを始める」
など、健康状態だけではなく日々の思い出がたくさん綴られていた。

現在、健康管理ノートはNo.161。ハナちゃんと過ごす日々は、これからもノートに刻まれていく。